FIREという言葉も広がり、早期リタイアを目指す人が増えています。FIRE達成の目安として知られる「4%ルール」は、アメリカで生まれ、長らく支持されてきた考え方です。しかし、経済状況や社会制度の異なる日本で、そのまま4%ルールを適用することが本当に最適解と言えるのでしょうか?
本記事では、日本の現状を踏まえ、4%ルールを見直すことで、より少ない資産で隠居生活を実現するための考察をおこないます。
4%ルールの基本的な説明
4%ルールは、この目標を達成するための重要な指針です。4%ルールは、資産から毎年4%を引き出しても、30年以上にわたって資産が枯渇せずに維持できるという考え方です。
具体的に年間200万円の生活費が必要な場合を考えてみましょう。
- 必要な資産総額の計算:200万円 ÷ 0.04 = 5,000万円
- 5,000万円の資産があれば、5,000万円の4%である200万円を毎年資産から引き出しても30年以上が枯渇しない
簡単に言えば、年間支出の25倍の資産額があれば、理論上は30年以上にわたって同じ生活水準を維持できる可能性が高いです。
原文の解説は、下記記事を参照ください。
日本版4%ルールの再考の必要性
「4%ルール」は、アメリカの経済環境や投資環境を前提に作られたものです。このルールは、主にアメリカ人が米国の株式市場に投資することを想定しています。
4%ルールは魅力的な考え方ですが、これは過去の米国市場のデータに基づいたものです。日本の現状を踏まえると、そのまま適用するにはいくつかの注意点があります。
例えば、インフレ率の違い、健康保険制度の仕組み、年金制度の違いなどがあります。そのため、日本で4%ルールをそのまま適用するのではなく、日本の現状に合ったルールに見直す必要があるのです。
日本と米国の違いを比較
4%ルールは主に米国の経済状況や投資環境を前提としているため、日本でそのまま適用することには注意が必要です。日本と米国では、以下のような違いがあります。
具体的には、以下のような点が日本と米国で大きく異なります。
項目 | 日本 | 米国 |
---|---|---|
経済成長率 | 長年低迷してる | 比較的高い成長率を維持 |
インフレ率 | 低インフレ率 | インフレ傾向(約3%) |
株式市場のパフォーマンス | 低いリターン | 高いリターンを示す傾向 |
金利水準 | 長らく超低金利の状態が続いている | 日本より高金利 |
年金制度 | 公的年金制度が充実 | 公的年金は限定的 |
平均寿命 | 85.15年 | 77.5年 |
医療費や介護費用 | 医療保険制度が比較的充実 | 高額な医療費がかかることが多く、民間保険の比重が大きい |
上の表を詳しく見てみると、日本と米国ではメリットとデメリットが逆になっていることがわかります。
日本
メリット
- 低インフレ率:資産の実質価値が維持されやすい。
- 公的年金制度の充実:老後の安定した収入源として期待できる。
- 医療保険制度の充実:医療費負担が少なく、安心して老後を過ごせる。
デメリット
- 経済成長率の低迷:資産価値の増加が期待しにくい。
- 低リターンの株式市場:投資による資産増加が難しい。
- 超低金利:預金や債券の利回りが低い。
米国
メリット
- 高い経済成長率:資産価値の増加が期待できる。
- 高リターンの株式市場:投資による資産増加が見込める。
- 高金利:預金や債券で比較的高い利回りを得られる。
デメリット
- インフレ傾向:資産の実質価値を維持するために対策が必要。
- 公的年金が限定的:自己資金で老後を支える必要がある。
- 高額な医療費:民間保険への依存度が高く、医療費負担が大きい可能性。
日本版FIREを実現するためには、日本でも米国株に投資することがFIREへの近道になると考えられます。
日本版FIREの実現に向けた具体的な戦略について詳しく解説していきます。
日本版FIREは、5%ルールや6%ルールも考慮できる
これまでの日本の経済状況で下記のことを考慮すると、4%でなくてもいいのではないかと考えられます。
- 低成長・低金利:日本の経済成長率や金利は、米国に比べて低い状態が続いています。そのため、米国と同じような高い運用利回りを期待することは難しいと言えます。
- 米国株への投資:日本にいながら米国株に投資することで、高リターンを期待できるため、5%ルールや6%ルールも選択肢として考慮できます。これにより、日本国内の低成長を補完し、資産運用の幅を広げることが可能です。
これらの点から、日本では4%よりも高い、5%、あるいは6%程度の資産取り崩し率が可能であると考えられます。
つまり、年間200万円の生活費を希望する場合、4%ルールでは5,000万円必要でしたが、5%ルールなら4,000万円、6%ルールなら約3,400万円と、より少ない資産で済む計算です。
インフレ率の違いによる影響
インフレは、物価が継続的に上昇することでお金の価値が目減りする現象です。歴史的に、米国は日本よりも高いインフレ率を経験してきました。
4%ルールは過去の米国市場のデータに基づいていますが、インフレ率の低い日本では、物価上昇に資産運用が追い付かず、資産の実質的な価値が減少してしまう可能性があります。
この点からも、日本でFIREを目指すなら、低インフレを前提とした、より堅実な資産運用計画を立てる必要があります。
次章では、こうした日本特有の状況を踏まえ、具体的な資産形成戦略について解説していきます。
日本版FIREの具体的戦略
日本版FIREを実現するためには、4%ルールをベースに日本の経済状況を考慮した戦略が必要です。ここでは、具体的な戦略を4つのポイントに絞って解説します。
1. 資産配分の見直し(国内外の分散投資)
低成長・低金利の日本市場だけに投資するのはリスクが高いと言えます。そこで、高い成長率が期待できる米国株など、海外資産への投資を積極的に検討しましょう。
分散投資は、特定の資産や地域に集中投資するリスクを軽減する効果があります。具体的には、
- 株式と債券の組み合わせ:株は値動きが大きい一方、高いリターンが期待できます。一方、債券は比較的安定した収益が期待できます。リスク許容度に応じて、これらの比率を調整しましょう。
- 国内外の株式投資:日本株だけでなく、米国株、新興国株など、成長性の高い海外株式にも目を向けましょう。
- 投資信託の活用:投資信託は、複数の銘柄に分散投資できるため、リスク分散に効果的です。特に、全世界株式やS&P500などのインデックスファンドは、長期的な資産形成に適しています。
2. リスク管理(緊急資金の確保、柔軟な引き出し戦略)
FIRE達成後も、病気や事故など予期せぬ出費が発生する可能性があります。そのため、生活費とは別に緊急資金を確保しておくことが重要です。
また、市場環境の変化によって、資産価値が大きく変動する可能性もあります。当初計画していた4%で資産を取り崩せない事態も想定し、必要に応じて取り崩し率を柔軟に見直すなど、状況に応じた対応が必要です。
具体的には、
- 生活費の6ヶ月~1年分の緊急資金を確保する
- 資産の一部を現金で保有しておく
- 生活費をダウンサイジングできる柔軟性を持つ
- 再就職の可能性も視野に入れる
など、複数の対策を検討しておきましょう。
3. 年金制度の活用
日本の公的年金制度は、老後の生活資金の重要な柱となります。FIREを目指す場合でも、公的年金制度を最大限に活用することが重要です。
- ねんきん定期便などで、将来受け取れる年金額を把握する。
- 付加年金や国民年金基金への加入を検討する。
- FIRE後の年金受給開始時期を戦略的に検討する。
など、年金制度を理解した上で、FIRE後のライフプランに組み込みましょう。
4. 医療費・介護費用への対策
日本は国民皆保険制度により医療費負担が軽減されていますが、FIRE後は、健康保険の加入形態が変わったり、高額な医療費が発生する可能性もあります。
- 健康保険の任意継続制度や国民健康保険への加入を検討する。
- 民間医療保険への加入を検討する。
- 介護保険制度について理解を深めておく。
など、将来発生する可能性のある医療費や介護費用についても、事前に対策を検討しておきましょう。あり、目的ではありません。 自分らしい人生設計を実現するために、しっかりと準備を進めましょう。
まとめ
ポイントは、日本ならではの状況を逆手に取ることにあり!
- 5%ルール、6%ルールも視野に! :米国株投資などで高い利回りを実現すれば、より高い資産取り崩し率も夢ではありません。少ない資産でもFIRE達成に近づける可能性が広がります。
- 低いインフレ率を味方に:インフレ率が低い日本は、資産の実質価値が目減りしにくい環境。堅実な資産運用計画で、長期的な安定を目指せます。
- 公的制度を最大限活用:健康保険や年金制度など、日本の充実した公的制度を有効活用することで、FIRE後の不安を軽減できます。
具体的な戦略
- 国内外の株式・債券への分散投資で、リスクを抑えつつリターンを最大化。
- 緊急資金の確保や柔軟な資産取り崩し戦略で、不測の事態にも対応できる体制を構築。
- 公的年金制度を理解し、受給開始時期などを戦略的に計画。
- 健康保険、民間医療保険、介護保険制度を理解し、FIRE後も安心して医療・介護を受けられるよう準備。
日本版FIREは、4%ルールにとらわれず、日本の現状に最適化することで、より早く、より現実的に実現可能なものとなります。