今回は、4%ルールが実際にどの程度有効なのか、米国で行われた歴史的な検証結果を紐解きながら、その信憑性やリスク、そして知っておくべき重要事項について詳しく解説していきます。
米国での検証結果を日本の状況を踏まえ再考した「【日本版FIRE】4%ルールを見直して最速で隠居生活を実現する」という記事で、日本では4%ルールをどのように活用すべきかについて解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。
4%ルールとは?FIRE達成の鍵となるシンプルな法則を解説!
4%ルールとは、年間支出額の25倍の資産を築き、毎年その資産の4%以内で生活費を取り崩せば、理論上資産が枯渇することなく生活を続けられるという考え方です。
このルールは、1994年にトリニティ大学のウィリアム・ベンゲン氏が提唱した「トリニティ・スタディ」と呼ばれる研究によって広く知られるようになりました。FIREムーブメントの理論的支柱とも言えるこの研究は、長期的な資産運用と取り崩しに関する考察の基礎となっています。
4%ルールのメリット
- シンプルで理解しやすい:複雑な計算を必要とせず、退職後の資産運用の指針として使いやすい。
- 長期的な資産の持続可能性:30年という長期間にわたって資産が枯渇するリスクを最小限に抑えられる。
- インフレへの対応:毎年のインフレ調整により、購買力の維持が可能。
成功率95%以上!米国で検証された4%ルールの根拠
トリニティ・スタディでは、1926年から1995年までの70年間の米国の株式・債券市場のデータを使用し、様々な経済状況下における4%ルールの有効性を検証しました。
主な前提条件は以下の通りです。
- 退職期間:15年、20年、25年、30年
- 投資ポートフォリオ:S&P 500株価指数と長期高格付け社債
- 初年度取り崩し額:資産の3%から12%までの範囲
- ポートフォリオ成功の定義:指定された期間中に資金が枯渇しないこと
- 資産配分:株式100%、株式75%/債券25%、株式50%/債券50%、株式25%/債券75%、債券100%
- ポートフォリオのリバランス:定期的に実施
- 税金・投資手数料:考慮せず
- インフレ調整:実施
1926年から1995年までの70年間には以下のような特徴がありました。
- 10年間はデフレ(特に1926年から1932年の間に頻繁)
- 残りの60年間はインフレ
インフレ率は、単一の固定値ではなく、1926年から1995年までの各年の実際のCPI変化率を使用
その結果、ほとんどのケースにおいて、資産の取り崩しを開始してから30年間、資産が枯渇することなく運用できたという結果が出ました。特に、株式と債券を75:25の比率で保有した場合、初年度の取り崩し率を4%に設定すると、30年間資金が枯渇する確率はわずか5%という高い成功率を示しました。
つまり、過去の米国市場のデータに基づけば、4%ルールに従うことで、高い確率で長期的な資産運用に成功する可能性があると言えます。
4%ルール成功の鍵はポートフォリオにあり!米国で推奨される資産配分とは?
トリニティ・スタディでは、株式と債券の比率によって成功率が異なることも明らかになりました。
一般的に、FIREを目指す人が米国でよく利用する投資先としては下記が挙げられます。
- 米国株式: 成長性が高く、長期的なリターンが期待できる
- 米国債券: 株式と比較して価格変動が小さく、安定的なリターンが期待できる
トリニティ・スタディの結果を踏まえ、米国では、株式と債券を7:3程度の比率で保有することが推奨されるケースが多いです。
もちろん、最適な資産配分は年齢やリスク許容度、投資目標などによって異なるため、自分に合った配分を見つけることが重要です。
また、ポートフォリオのリバランス、つまり定期的に資産配分比率を見直し、当初の配分に戻す作業も重要です。リバランスを行うことで、リスクをコントロールし、長期的な運用成績の安定化を図ることができます。
4%ルールは本当に安全?リスクと対策
4%ルールは、過去のデータに基づいた一つの目安であり、未来を保証するものではありません。
以下のようなリスクを理解しておく必要があります。
- 想定外のインフレ:急激なインフレが発生した場合、資産の実質価値が目減りし、生活費が不足する可能性があります。
- 長生き:医療の進歩により平均寿命は延びています。想定よりも長生きした場合、資産が枯渇するリスクが高まります。
- 予期せぬ出費:病気や事故など、予期せぬ大きな出費が発生する可能性もあります。
これらのリスクを軽減するためには、以下のような対策が考えられます。
- 生活費の見直し:無駄な支出を見直し、生活レベルを調整することで、取り崩し額を抑えることができます。
- 柔軟な資産取り崩し戦略:市況に合わせて、取り崩し額を柔軟に調整することを検討しましょう。
- 労働収入:完全に収入を断つのではなく、パートタイムなどで収入を得る方法も検討しましょう。
まとめ:4%ルールを正しく理解し、FIRE達成に近づこう!
4%ルールは、FIREを目指す上で非常に参考になる考え方ですが、あくまで過去のデータに基づいた一つの目安に過ぎません。
重要なのは、4%ルールを盲信するのではなく、その根拠やリスクを正しく理解した上で、自身の状況に合わせて、柔軟に取り入れていくことです。
「【日本版FIRE】4%ルールを見直して最速で隠居生活を実現する」では、日本の状況を踏まえた上で、4%ルールをどのように活用すべきかについて解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。